トルコ石の宝石言葉 成功
エスニック情緒ただようトルコ石
繁栄をもたらす宝石といわれ、歴史の古い宝石です。
トルコ石ブルーは、独特の美しいブルーを指す言葉にもなっています。

語源
13世紀までは美しい石を意味する「カレース」という名で呼ばれ、のちにベニスの商人たちを通じてフランスに渡った際、「トルコの石」と呼んだことからこの名称が一般化したようです。
産地と品質
トルコ石の最も重要な産地はイランのネイシャプル鉱山で、高品質のものが多く産出されます(ペルシャ産)。
アリゾナ産のトルコ石はペルシャ産に比べ、もろくて変色しやすいため一部アクリル処理がされています。
中国産のトルコ石のほとんどにメイトリックスが入り、色の濃いのが特徴で一部アクリル処理がされています。
色の種類と価値
天然トルコ石の最高の品質は純粋なスカイブルーです。
グリーン味を帯びると美しさは減少し、価値も低くなります。
メイトリックスの有無は好みによりますが、バランスよく入っていなければ価値がありません。
◆ 災いを身をもって防いでくれる宝石 ◆
喜連川宝石研究所 所長 喜連川純氏著
むかしから、良質のトルコ石は、エジプトのシナイ半島やペルシア(いまのイラン)で採れていました。
それが十字軍の遠征により、東方文化とともに、多くのトルコ石がトルコのイスタンブールの市場からボスポラス海峡をへてヨーロッパにもたらされたため、トルコ石(ターキの石・ターコイズ)とよばれるようになりました。
けっしてトルコで産出した宝石ではないのです。
さて、シルクロード華ゆかりし時代に栄えた都市がいまでも残っていますが、その都市にある博物館に行ってみますと、かならす見られるのがサンゴとトルコ石で飾られたアクセサリーです。
派手な赤のサンゴや衣装は、猛烈な砂嵐でもその人の存在位置を示し、一方トルコ石は、
持ち主や隊商の馬とか駱駝(らくだ)になんらかの異変があったときは、変事を石が吸収し、ヒビが入ったり、色があせたりして大事にいたらないよう守ってくれる、いわばシルクロード版身代わり不動の役をしてくれると信じられていたのです。
トルコ石の産地イランの人達は、そのころソグド人とよばれ、商才にたけていたため、
隊商を組んでシルクロードのいたるところで商売の輪をくりひろげておりました。
そのために中国ではこの人たちのことを胡人とか商胡とかよんでいましたが、ソグド人たちによってシルクロードを通り、やがて海を渡ってわが国にきたものも多く、いまでも、胡という字の入っている胡麻、胡桃(くるみ)胡椒(こしよう)、葫(にんにく)胡粉(ごふん・おしろいとか日本人形の顔などに使っている貝殻の粉でできた塗料)などにその歴史のロマンをみることができます。
そうそう胡弓というのもありました。
また、ソグド人は、商談がまとまるまで座りこんでねばりづよく、商売をしたところから胡座(あぐら)という字もうまれました。
今日、日本で胡渡り(古渡りとも書きます)として売られているサンゴもシルクロードの博物館でみられるサンゴとおなじ、地中海で採れたサンゴのことをさします。
とうぜん、トルコ石も隊商の荷のなかに入っていたことはいうまでもありません。
◆ モスクのドームはトルコ石の青 ◆
イスラム圈の人はじつにトルコ石が大好きで、なかでも、自国が産地であるイランなどは「国の石」に指定しているほどです。
また、イスラム圈に旅行して目立つのは、なんといってもあざやかな、ターコイズーブルーのタイルでいろどられたモスクのドームでしょう。
中に入ってみますとごフビスーラズリよりやや薄い青に、金や白でコーランやイスラム文様をあしらったタイルが美しく貼られ、その豪華さに思わず見とれてしまうほどですが、こちらの青はターキッシユーブルーといって、その語源も陶磁器からきたもので、さきほどのターコイズーブルーと混同しそうですが、まったくぺつの青のことなのです。
トルコ石は褐鉄鉱(ライマナイト)という褐色の鉄鉱石に凝結されたかたちで採れます。
成分は、鉄分を少々ふくんだ含水銅・アルミニウムリン酸塩で、アメリカ人や日本人好みの、あの快晴の空のようなブルーは銅によるものです。
これに鉄分が加わる度合いによって、だんだん緑みをおびた青になるわけですが、中国やチベットの人たちは渋い青磁色を好むせいか、はたまた自国産のほとんどがその色のためか、緑松石とか松石といって、緑みの入った青色の方を珍重しているようです。
ちなみに、中国では湖北省、映西省、河南省などで採れ、チベットでは「国の石」として仏教行事にはかかせない宝石になっております。
また、欧米では砂岩や褐鉄鉱がさながらクモの巣のように入った、スパイダー・ネットのトルコ石も人気があります。
◆ トルコ石で気をつけたいこと ◆
○市にお客さまのための「宝石教室」を話しにいったときのことです。
お客様の中に、手から顔から異常に黄色く(もしかして、黄だん…)と思うようなご婦人がいらっしゃいました。
しかし、黄疸特有の眼の黄色みはありません。私は思わず「どうなさったのですか」と声をかけてしまいました。
そこで、その方のおっしやるには、「私はミカンが大好きで、一日に1キロから多いときは2キロも食ぺてしまいます。
それでこんなになってしまったのです」。
(へえー、ミカンでこんなになるんだ…)、私は正直いって、おどろくよりも呆れてしまいましたが、とっさにトルコ石のことを思いだし「お客さまはトルコ石をお着けにならないほうがよろしいでしょう。
なぜなら、トルコ石はターコイズと語感がそっくりなくらい多孔質で、ちょうど白い壁にマジックーインクが染み込むように色や汚れが入っていくので、お客さまがおつけになると、
たちまち、せっかくのブルーが緑っぽくなってしまうと思うのです。
みなさんも、トルコ石をつけたままお台所をしないようにしてください。
まんいち果汁とかしょうゆなどがついたら、こすらす、そっとティッシュ・ペーパーで吸い取りすばやく水洗いをし、水気を取るようにから拭きをしてください。洗剤を使ってはだめですよ」。
まわりのお客さまも納得顔。おかけで説得力のあるゼミをすることができました。
トルコ石には、このほか水分がなくなるとヒビや色があせてくることがあります。
とくにアメリカ産のトルコ石はイラン産よりも多孔質なのでその傾向が強いようです。
また、トルコ石はにせものが多いので、おみやげと割り切るいがいは外国でお買いにならないほうがいいでしょう。